年末調整で渡される用紙の1つに給与所得者の扶養控除等(異動)申告書があります。
今回はこの用紙に記載されている「16歳未満の扶養親族」についてお伝えしていくわけですが、「住民税に関する事項」と書いてあるだけでは記入することで住民税にどういった影響があるのかわからないですよね。
裏面の注意書きを読んでも「誰が記入をするべきなのか?」が書いてあるだけで、実際にどう影響があるのかは書いてないんですよね。
そもそも、裏面を見た瞬間、字がびっしりで難しい言葉で書かれていてうんざりではありませんか?
そこで今回は
・住民税にどういった影響があるのか?
・夫婦共働きの場合はどちらの申告書に書けばいいのか?
以上3つを解説していきたいと思います。
一口に扶養といっても大きく分けて、税制上の扶養と社会保険上の扶養がありますが、今回は税金に絡む扶養ということなので税制上の扶養についてのお話です。
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年末調整の16歳未満の扶養親族の意味とは?
扶養親族がたくさんいると税金が安くなる!!
よく聞きますよね。
実はこれって半分合っていて半分間違っているんです。
こう言われるのは税金を計算するときに扶養控除という所得控除を使うことができるからなんです。
所得税というのは
「所得-所得控除」
をしたあとに、残った所得に税率を掛けて税額が決まりますので、所得控除をたくさん使うことができれば所得税が少なくなります。
この考え方は住民税を計算するにも同じで、使える所得控除が多くなれば住民税も安くなります。
つまり扶養親族がたくさんいれば税金が安くなるわけです。
しかし、この扶養控除の対象者とは年齢が16歳以上と決められています。
以前は16歳未満の扶養親族でも扶養控除の対象者になったのですが、平成22年に改正されています。
そのころに児童手当の改正も行われていて、児童手当の支給対象者は拡大され、支給額も多くなりました。
「児童手当の拡大をするんだから16歳未満の扶養控除は必要無いでしょ!」ってことなんでしょうかね?
なのでこの16歳未満の扶養親族という言葉や申告書の記入欄は平成23年以降に追加されたのです。
といったらそうではなくて、国税庁のHPにはこのように書かれています。
扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡し又は出国する場合は、その死亡又は出国の時)の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。
(注)出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。
(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
出典:国税庁HP
年齢のことは触れられていませんよね。
上記に当てはまるのであれば赤ちゃんであろうと老人であろうと扶養親族となります。
この扶養親族という大枠があって、そこからさらに絞りこんでいくイメージです。
例えば、扶養親族に該当して、且つ16歳以上の人は控除対象扶養親族になります。
さらにその中で19歳以上23歳未満の人は扶養親族の中の控除対象扶養親族の中の特定扶養親族。
といったようにだんだん細かくなっていきます。
なので16歳以上でも16歳未満でも扶養親族は扶養親族なのですが、
「16歳未満の扶養親族というのは扶養控除の対象にはならない扶養親族」という意味です。
ではなぜ一見税金に関係のなさそうな16歳未満の扶養親族を記入する欄があるのか?
それは所得税には無い、住民税独自のルールがあるからなんです。
16歳未満の扶養親族を書くことで住民税の非課税に影響
16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象ではないことをお伝えしました。
しかし住民税では「この所得までなら非課税にするよ!」といった制度があります。
東京23区の場合では本人の所得が
であれば住民税が非課税になります。
扶養親族というのは大枠でしたよね。
年齢は関係ないのでこの計算式に16歳未満の扶養親族も含むことができます。
例えば、家族構成が、
・本人
・配偶者
・15歳の子
・17歳の子
(配偶者は同一生計配偶者、子供は扶養親族の条件を満たしている)
だとしたら
35万円×4人+21万円=161万円
本人の合計所得が161万円以下であれば住民税は非課税になります。
住民税が非課税になる所得の基準は「住んでいる地域」「均等割の部分が非課税」「所得割の部分が非課税」等で異なるので詳しくはお住いの市区町村に確認してみてください。
このように、16歳未満の扶養親族がいることで住民税が非課税になる所得の基準に影響があるのです。
逆に言えば影響があるのはここだけです。
なので16歳未満の子供がいても本人の所得が多く、非課税ラインを超えるようであれば書いても意味は無いってことになりますね。
これを踏まえたうえで、共働きの場合では「どちらの申告書に書くか」で住民税の金額を抑えることができる場合もあります。
共働きの場合は16歳未満の扶養親族はどっちに書くとお得?
まず大前提として、夫婦共働きの場合、16歳未満の扶養親族を妻、夫両方の用紙に書くことはできません。
実際には子供を2人で協力して育てているわけですが税制上ではどちらかに決めなければなりません。
16歳未満の扶養親族は住民税が非課税になる所得に影響して、扶養控除は関係ないってことでしたよね。
なので、単純に「16歳未満の扶養親族を記入したことにより住民税が非課税になる所得を下回る方」に書いた方がお得になります。
例えば、
・夫の所得が300万円
・妻の所得が120万円
・16歳未満の扶養親族が2人
この場合、東京23区だと所得126万円までなら非課税になります。
夫の方に記入しても全く影響はありませんが、妻の方に記入すれば妻の住民税は非課税になりますね。
詳しい金額は人により異なるので計算するのは難しいですが、所得120万円だと年間4.5万円くらいの住民税を払わなくて良いことになりますかね。
扶養控除であれば一般的には所得の多い人に適用したほうが有利になるケースが多いと思います。
それに、「子供を扶養する」というと、収入は夫の方が多いし、世帯主は夫だし、なんとなく夫。
といったイメージもあるのではないでしょうか?
ですが、別に収入の多い方に扶養をいれなくてはいけないといったルールもありませんし、社会保険の扶養と合わせる必要もありません。
また、複数人扶養親族がいた場合、1人は夫の扶養にして、1人は妻の扶養にする。といったように分けることも可能です。
ちなみに、社会保険の扶養は、原則収入の多い方に入れることになります。
と思った方もいるかもしれません。
しかし、注意しなければいけないこともいくつかあるのでお伝えしますね。
16歳未満の扶養親族を記入する際の注意
様々なケースがあると思いますが、わかりやすくするため今回は以下のような条件でお伝えします。
・妻はパートで扶養親族を記入すれば住民税が非課税になる
夫が会社からもらっている手当に注意
上記の場合、妻が記入したほうがお得ですよね。
しかし、税制上は関係ないのですが、夫が会社から家族手当、扶養手当、子供手当(呼び方は様々だと思いますが)をもらっている場合、その条件が「年末調整に書いてある扶養親族」に基づいて支給されている場合があります。
妻の方に扶養親族を記入してしまったがゆえに手当がもらえなくなり、住民税が非課税になった金額より手当がなくなった金額のほうが大きく、損をしてしまった。ということがあるかもしれません。
16歳未満の扶養親族に障がいがある
16歳未満の扶養親族に障がいがある場合、扶養控除は受けることはできませんが、障害者控除は適用されます。
こちらは所得税にも影響しますので夫の方に記入したほうが節税になる可能性もあります。
児童手当の所得制限
子供がいれば誰でももらっているイメージがありますが、実は所得の基準が決められていて、基準額を超えると減額になります。
この所得基準は扶養親族の数も影響していて、扶養親族の数が多ければ所得基準も上がります。
そして、ここで言う扶養親族の数とは税法上の扶養です。
つまり、年末調整で記入する「16歳未満の扶養親族」が含まれるということです。
子供を妻の扶養に入れてしまったことにより、夫の所得が基準額をオーバーし、児童手当が減額になってしまう可能性もあり得ます。
ちなみに児童手当は夫婦共働きの場合では年収の高い方に支給されるルールとなっています。
・夫は子供を扶養しないと児童手当の所得基準に引っかかる。
・妻は子供を扶養に入れると住民税が非課税になる。
めずらしいケースだとは思いますが、こういった場合では夫婦で良いとこ取りはできないようになっているんですね。
妻に扶養を入れたことにより非課税になるのであればもちろんそうすることに越したことはないですよね。
しかし住民税だけに焦点を当てて他で不利益を被ってしまうのでは元も子もありません。
上記の事を確認するのはもちろん、加入している健康保険や住んでいる地域の保育料など、ローカルルールもあります。
自分だけで判断するのではなく、会社や健康保険、市区町村などにもよく確認していただければと思います。
「16歳未満の扶養親族」まとめ
・影響があるのは住民税が非課税になる所得の計算
・共働きでは非課税になる方に扶養をいれたほうがお得
・ただし、他の制度も考慮すること
以上をお伝えしました。
国の制度というのは頻繁に改正されます。
その度にどんどん複雑になり、新しい言葉も生まれます。
知らなければ損をしてしまうこともお金関係ではよくあるかと思います。
今回は「16歳未満の扶養親族、住民税への影響」について書きましたが、他にも影響があることは忘れないでくださいね。
この記事で誰か一人でもためになった。節税になった。と言う人がいれば嬉しく思います。