僕はよくショッピングモールへ行くのですが、店内を歩いていると
「2時から3時まで、お時間限定のタイムセールでーす。店内商品最大60%OFFでーす。」
「今日まで入会金、手数料無料です。」
なんて謳い文句をしょっちゅう聞きます。
お時間限定や期間限定なのに行くたび聞くんですよね。
もちろん嘘ではなくてタイムセールも時間でちゃんと終わります。
でも気になりませんか?なぜ多くのお店が時間限定や期間限定を打ち出すのか?
色々な意味があるとは思いますが、そのなかの一つに損失回避性の効果というものがあって、人の心理に訴えかけてきているんです。
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損失回避性とは?
2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンやエイモス・トベルスキーが「人は収益を好むより損失を過度に嫌うという心理が働く」ということを提唱しました。
これを損失回避性といいます。
ごくごく当たり前のことですよね。誰だって損はしたくありません。
しかし、損をしたくないという心理が強く働くばかり、実際は損をしているわけではないのに損失から逃げようとします。
よく例に出されるのがコイン投げのギャンブルですね。
あなたはこのギャンブルに参加しますか?
・100円玉の表が出たら1,200円もらうことができる。
・100円玉の裏が出たら1,000円支払う。
どうでしょうか?なんとなくこのギャンブルには参加しない方が良いな。と感じた人が多いと思います。
多くの人は参加する事を拒むという事がわかっています。
僕もきっとやりません。「2分の1で1,000円払わなくちゃならない」という思いの方が強いからです。
僕も多くの人でしたね。
でも確率と利益を冷静に考えれば、このギャンブルは参加者にとって実は有利なんです。
(1,200円×50%=600円)-(1,000円×50%=500円)=100円
数字上では100円お得なわけです。
しかし人は1,200円を得る期待感より1,000円を失う恐怖感の方が大きく感じます。
ショッピングモールのお店はこの原理の応用ですね。
時間限定、期間限定や今日まで手数料無料を打ち出すことにより
「今買わないと損をしてしまう」
「このままでは損をしてしまう」
と感じさせているわけです。
人はなにしろ損をしたくないのです。
損失回避倍率
では、先ほどのギャンブルでは受取金額がいくらであれば参加するのでしょうか?
多くの実験から、損失の1.5倍~2.5倍の金額であれば参加することがわかっていて、この倍率の事を損失回避倍率といいます。
コイン投げのギャンブルでは、もし裏がでたなら1,000円を失うことになりますよね。
この損失の1.5倍、つまり1,500円を受け取ることができる勝負であれば参加する人が多くなってきます。
面白いですよね。1,200円でもお得なのに2,000円くらいの利益がなければ参加する人は多くないんです。
コイン投げの例では損をするか得をするかの2択でしたが、損をしない場合でも損失回避性が働くことがあります。
例1
あなたの会社から賞与が出ることになりました。しかし条件があって次の選択肢A、Bのどちらかを選ばなければなりません。
A・賞与8万円を受け取る
B・賞与10万円を受け取る。ただし15%の確率でもらえない。
どうでしょうか?Aを選んだ人が多いのではないでしょうか?
Aは8万円を100%受け取ることができます。
Bは15%の確率でもらえないってことは85%もらえるってことですよね。
Bの期待値を計算すれば8万5千円を受け取ることができ、理論上はBのほうがお得となります。
コインの例とは違いあなたは損をすることはないですよね。ですが、Aを選べば100%8万円をもらえるという事がわかっているので私たちの心境は損失回避になり、「もし15%にあたってしまったらどうしよう」とリスク回避的な行動をとるためAを選びがちになります。
例2
会社の備品を壊してしまったため弁償することになってしまいました。
A・8万円を弁償する
B・10万円を弁償する。ただし15%の確率で弁償しなくてもよい。
こちらも例1と同じでBの期待値は8万5千円です。
ですが、この場合Bを選びがちです。8万円を確実に払うことより、もしかしたら払わなくてすむ15%に掛けようとします。
両方とも悪い選択肢の場合、リスク追求的になってしまうんですね。
まとめ
私たちが回避したいと考えているのは、リスク(不確実なこと)では無く損失という点です。
損をすることを異常に嫌うということでしたね。
なのでリスクと損失を分けて考えることが大切になってきます。
損失回避性は普段生活をするなかで、様々なところに潜んでいます。
「一番お得な生命保険」と「後悔しない生命保険」
「年末調整で還付された」と「年末調整で徴収だった」
内容が同じだったとしても表現の仕方や伝え方で人は不合理な行動をとってしまうかもしれません。
知らず知らずのうちに損失回避性を利用して動かされている場合もありますので一度立ち止まって冷静に考えてみることも大切です。
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