自営業者やフリーランスで働いていた夫を亡くしてしまった場合にもらえる年金の1つに寡婦(かふ)年金という年金があります。
なかなか聞きなれない言葉ですよね。
普段生活しているなかでも
「遺族年金が~」
「保険金が~」
なんて会話はよく聞きますが
「寡婦年金が~」とか言う人には出会ったことがありません。
確かにもらえる人は限られているし、マイナーな年金なのかもしれません。
故に「誰が」「どういった時に」もらえるのかわからない方も多いと思います。
知らずに請求しなかったとなると将来もらえるはずだった年金がもらえなくなってしまうかもしれません。
そこで今回は寡婦年金と遺族年金は違うのか?
金額や受給要件、ほかの年金との併給はできるのか?
などをわかりやすくお伝えします。
特に国民年金第1号被保険者(自営業者)の方には、しっかり把握しておいてもらいたい年金です。
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寡婦年金とは?遺族年金とは違うの?
寡婦年金とは遺族年金の中の1つで国民年金第1号被保険者独自の制度です。
国民年金第1号被保険者だった夫が死亡したときに、妻が60歳~65歳になるまで受け取ることのできる女性限定の年金です。
国民年金では遺族基礎年金という年金がありますが、この遺族基礎年金は18歳未満の子がいることが条件なので、子がいない、あるいは子が18歳以上だともらえません。
遺族基礎年金をもらえない場合、夫が年金をもらう前に亡くなると夫が払ってきた保険料が掛け捨てになってしまいますよね。
その掛け捨て防止のために寡婦年金の制度があります。
しかし、遺族基礎年金がもらえないからといって無条件でもらえるわけでは無く、受給するには夫にも妻にも要件があります。
寡婦年金の受給要件と金額
寡婦年金の受給要件
②老齢基礎年金を受給したことが無く、障害基礎年金の受給権を有したことが無い
①については「第1号被保険者として」とあるので、以前会社勤めで厚生年金に加入していた期間があったとしても、その期間は受給資格期間に含めません。
受給資格期間とは保険料を払った期間と免除された期間の合計が10年以上です。
(以前は25年以上でしたが、平成29年8月1日以降は10年以上に改正されました。)
②の「 障害基礎年金の受給権を有したことが無い 」というのは、もらう権利を有したことが無いってことです。
年金の制度ではもらう権利があったとしても申請しなければもらえません。
障害基礎年金をもらっていなくても、障害を負ってもらうことができる状態であったのであれば、それは受給権を有していたことになります。
②自分の老齢基礎年金を繰り上げて受給していない
➂夫の死亡後5年以内に請求している
④夫に生計を維持されており、将来にわたって年収850万円未満
➄婚姻期間が10年以上
②について、基本的に老齢基礎年金は65歳からですが、早くもらうこともできます。
しかしその場合、妻の老齢基礎年金が優先されてしまい寡婦年金をもらう事はできません。
④について、夫の死亡当時に年収850万円以上でも、5年以内に定年などで年収が下がる場合にはもらえる可能性があります。
➄について、事実上婚姻関係と同様の事情である場合も含みます。
細かい条件はありますが
「夫が自分のもらうはずだった年金をもらわずに死亡した場合に、妻が自分の年金をもらうまでの繋ぎの年金」
というイメージですね。
寡婦年金の金額
夫が本来受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3です。
しかし計算に入れるのは国民年金第1号被保険者の期間だけです。
まず、老齢基礎年金の計算をしてましょう。
平成31年度の老齢基礎年金の満額は780,100円です。
780,100円(老齢基礎年金の満額)×240月(第1号被保険者として払った20年間)÷480月(20歳から40歳までの期間)=390,050円
この金額の4分の3です。
390,050円×4分の3=292,537円
要件を満たしていれば妻が60歳になったときから支給されるのですが、状況により支給されないケースもあります。
そこでもう1つ、国民年金独自の制度に死亡一時金といった制度があります。
死亡一時金とは?
死亡一時金も寡婦年金と同じで国民年金1号被保険者独自の制度です。
しかしこちらの要件は寡婦年金より緩くなっています。
第1号被保険者として保険料を納めた月数(4分の3納付月数は4分の3月,半額納付月数は2分の1月,4分の1納付月数は4分の1月として計算)が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。
・死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
・付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
・遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。
・寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択します。
・死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。
出典:日本年金機構HP
保険料を納めた月数 | 支給される金額 |
36月以上180月未満 | 12万円 |
180月以上240月未満 | 14.5万円 |
240月以上300月未満 | 17万円 |
300月以上360月未満 | 22万円 |
360月以上420月未満 | 27万円 |
420月以上 | 32万円 |
寡婦年金と違うところは保険料を納めた期間が3年以上であれば支給されることと、受け取れる遺族の範囲が広いというところですね。
しかし要件にもあるように、寡婦年金と死亡一時金は両方もらう事ができないのでどちらか有利な方を選択しなければなりません。
それでは、どちらが有利なのか見ていきたいと思います。
寡婦年金と死亡一時金はどちらがお得?
もらえる金額は寡婦年金の方が多くなります。
寡婦年金を受け取るには最低でも10年の受給資格期間が必要です。
この10年で計算してみても約145,000円になります。
もし妻が64歳で1年しか寡婦年金を受け取れなかったとしても死亡一時金を上回ります。
金額面だけで見れば寡婦年金の方がお得ですが、死亡一時金のメリットもあります。
寡婦年金をもらうための受給資格期間を満たしていないときや、妻自身が老齢基礎年金を繰り上げてもらうときでも死亡一時金は受け取れます。
また、死亡一時金は妻が60歳にならなくても受け取ることができるので、まとまったお金をすぐに受け取りたい場合などに有効です。
基本的には寡婦年金の方がお得ですがご自身の状況に応じて選択する必要があります。
寡婦年金をもらう場合、他の年金との関係
年金制度では原則1人1年金となっていますので2つの年金がもらえる場合、どちらか有利な方を選ぶことになります。
遺族基礎年金と寡婦年金
遺族基礎年金をもらえる場合は寡婦年金を選ぶ理由はありません。
遺族基礎年金の方が金額は多いので
「遺族基礎年金をもらえない場合に仕方なく寡婦年金を選ぶ」
といったかたちですね。
ただ、同時に受け取ることができないだけで、遺族基礎年金の支給が終わったあとに寡婦年金を受け取ることもできます。
たとえば、子どもがまだ18歳未満 (障害等級1、2級なら20歳) のときに夫が死亡したとします。
そういった場合、妻には遺族基礎年金が支給されます。
その後子供が18歳(障害等級1、2級なら20歳)になり、遺族基礎年金をもらえなくなったとします。
そのときに妻が60歳に達していなければ60歳から寡婦年金も受給することができます。
遺族厚生年金と寡婦年金
死亡した当時夫が会社員で厚生年金に加入していたが、過去に自営業者などで国民年金第1号被保険者として10年以上保険料を納めていた。
この場合妻は遺族厚生年金を受け取ることができ、60歳になったら寡婦年金を受け取る権利もあります。
しかしこの場合1人1年金の原則で遺族厚生年金と寡婦年金のどちらかを選ぶことになりますが、一般的に遺族厚生年金の方が金額は多いと思いますし、5年間しかもらえない寡婦年金を選ぶことは少ないでしょう。
障害基礎年金と寡婦年金
妻が障害基礎年金をもらっている状態で寡婦年金も請求できるようになった場合、障害基礎年金は老齢基礎年金の満額と同じ金額なので、4分の3になってしまう寡婦年金を選ぶ理由は無いと思います。
1人1年金の原則で障害基礎年金と寡婦年金の併給はできませんが、死亡一時金は請求することができます。
老齢厚生年金と寡婦年金
妻が60歳から特別支給の老齢厚生年金をもらえる場合、どちらかお得な方を1つ選ぶことになります。
妻が会社員として長く勤めていた場合、寡婦年金より自分の老齢厚生年金の方が多くなることもあるかと思います。
この場合でも死亡一時金は請求できます。
まとめ
遺族年金といっても複数あり、受給要件やご自身の環境で受け取る年金は変わってくると思います。
まずは自分が対象になる年金を理解し、お得な方法で受け取っていただきたいと思います。
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