夫と死別し母子家庭になると遺族年金(母子年金)の金額はいくら?

夫と死別してしまった場合、今後の生活、教育のことなどで不安になると思います。

色々な不安があるとは思いますが、やはりお金の問題は切っても切り離せないですよね。


遺族年金があるからとりあえずお金のことは心配ない!って思う人もいるかもしれませんが実は誰でも受け取れるものではないんです。


大前提として、自ら申請しないともらえませんし、亡くなった夫の状況により支給額も大きく変わってきます。



そこで今回は、母子家庭になると遺族年金はいくらもらえるのか?金額や種類などを解説したいと思います。

補足
母子年金は昭和61年の制度改正で廃止されました。
今では母子年金という制度は無く、遺族基礎年金に統一されています。

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母子家庭になると遺族年金(母子年金)はいくらもらえる?

簡単にいうと

亡くなった夫が自営業者等(国民年金1号被保険者)
・遺族基礎年金
・寡婦年金
・死亡一時金
亡くなった夫が会社員、公務員(国民年金2号被保険者)
・遺族基礎年金
・遺族厚生年金

を受け取ることができるのですが、

・亡くなった夫の働き方や加入していた期間、保険料の支払い状況
・残された遺族の人数、年齢

などにより、支給される種類や金額が大きく変わってきます。

まずは多くの人が対象となる遺族基礎年金から見ていきましょう。

遺族基礎年金

自営業者やフリーランスの夫(国民年金1号被保険者)が亡くなった場合に妻や子に支給される年金です。

亡くなった夫の要件
次の①から④のいずれかに当てはまる人です。
① 国民年金の被保険者であった

② 国民年金の被保険者であった人で、国内に住所がある60歳以上65歳未満

③ 受給資格期間が25年以上ある老齢基礎年金の受給権者であった

④ 受給資格期間が25年以上ある老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた

上の①②の場合には死亡した月の前々月までに保険料を払った期間と免除されていた期間の合計が全体の3分の2以上でなければなりません。


たとえば、18歳から会社員をしていて、25歳から自営業者になった夫が40歳でなくなった場合、保険料を払うべき期間は22年です。

この22年の内、払った期間と免除を受けた期間の合計が3分の2以上でなければなりません。


保険料をしっかり納めていれば問題はないのですが、これには特例もあります。

特例
平成38年4月1日以前に死亡日がある場合、死亡月の前々月から過去1年間に保険料の滞納がなければ受給できます。
但し、死亡日に65歳以上の人には適用されません。

③④については、保険料を25年以上払っていて老齢基礎年金をもらう権利があった人です。
年配の人に対する要件ですね。



老齢基礎年金は平成29年以前は25年以上保険料を払わなければもらうことができなかったのですが、今は10年以上に変更されました。

しかし遺族基礎年金では25年のままです。


これ、結構勘違いしやすいです。
「老齢基礎年金をもらうことができる人」ではなくて、遺族基礎年金においては25年以上保険料を納めている必要があります



なんかごちゃごちゃしていますが、基本的には保険料をきちんと払っていて、未納の状態を放っておかなければ大丈夫です。

受給できる遺族
夫に生計を維持されていた子または子のある配偶者

ここでの子というのは18歳になった最初の3月31日までの子です。
(子に障害がある場合は20歳になって最初の3月31日)

子のある配偶者の年収は850万円未満でなければなりません。

遺族基礎年金額
780,100円+子の加算額
(平成31年度は780,100円)

子の加算額は1人目、2人目は各224,500円

3人目以降は各74,800円

たとえば、

・子が2人の場合
780,100円+224,500円+224,500円=1,229,100円

・子が4人の場合
780,100円+224,500円+224,500円+74,800円+74,800円=1,378,700円




遺族基礎年金は18歳未満の子がいる場合に支払われる年金で、子がいない、あるいは子が18歳以上であるともらえません。

代わりに妻がもらえるわけでもないので子のための年金って感じですね。



夫が亡くなったときに対象となる子がいなければもらえないわけですが、それだと今まで夫が払ってたいた保険料が掛け捨てになってしまいます。


そこで、掛け捨て防止として国民年金1号被保険者には寡婦年金や死亡一時金といった制度があります。

寡婦年金とは?遺族年金と違うの?金額や受給要件をわかりやすく解説!

2019年3月11日



ここまでが遺族基礎年金です。
夫が保険料をしっかり払っていたことが前提にはなりますが、
死別して母子家庭になった際には「780,100円+子の加算額」が、子のいる妻か子に支給されます。

遺族厚生年金

こちらは会社員(国民年金2号被保険者)の夫が亡くなった場合に遺族基礎年金に上乗せして受け取ることのできる年金です。

亡くなった夫の要件
次の①から④のいずれかに当てはまる人です。
①厚生年金の被保険者であった

②厚生年金の被保険者期間中の傷病がもとで、初診日から5年以内に亡くなった

➂障害厚生年金の1級、2級の受給権者であった

④老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間25年以上を満たしていた

受給できる遺族
(妻、夫、子)→父母→孫→祖父母の順

子や孫が受け取る場合には遺族基礎年金と同じく18歳になった最初の3月31日までですが、他の人が受け取る場合は一生涯支給されます。


ただし、子のいない妻が30歳未満と若い時に夫を亡くした場合、遺族厚生年金は5年間しか支給されません。

「子がいないし若いんだから働けるし、再婚の可能性もあるでしょ」ってことですかね。

母子家庭で子がいる場合は30歳未満でも関係ありません。生涯もらうことができます。

遺族厚生年金額
夫がもらうはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3相当額

老齢厚生年金は加入していた期間によってもらえる金額が変わりますが遺族厚生年金の要件①②③では短期要件といって300月(25年)分が保障されています。


つまり厚生年金の加入期間が12ヶ月(1年)の夫が亡くなった場合でも遺族厚生年金は300月(25年)で計算されます。




しかし④に該当する場合には長期要件といって300月の保障が無く、実加入月で計算されます。
この要件に該当する人はそこそこの年齢の人です。

25年の受給資格期間というのは厚生年金の期間だけではなくて、国民年金や免除期間をすべてひっくるめた期間です。


1号被保険者の期間が24年で2号被保険者の期間が1年でも25年になり、④に該当します。
もしこのような加入歴だと遺族厚生年金は少なくなりますね。
実加入月で計算するので1年分です。

中高齢寡婦加算

こちらは妻がもらう遺族厚生年金に上乗せして支給されるもので、夫の要件は遺族厚生年金と同じですが、妻の要件に違いがあります。

妻の要件
①夫の死亡当時、40歳以上65歳未満の子のない妻

②子があっても40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を失権している妻

たとえば、妻が30歳で子供を産んで、妻が40歳の時に夫が死亡したとします。

この場合、夫の死亡当時、妻は40歳以上ですが子供が10歳で遺族基礎年金が支給されるので中高齢寡婦加算はありません。

しかし、子供が18歳になり遺族基礎年金をもらえなくなったときに妻は48歳です。
この場合「遺族基礎年金を失権している妻」なので48歳から中高齢寡婦加算が支給されます。

遺族基礎年金をもらっている間は中高齢寡婦加算は無いということですね。

中高齢寡婦加算額
・妻が受け取る遺族厚生年金に585,100円が加算されます。

経過的寡婦加算

妻が65歳になり中高齢寡婦加算の支給が終わると妻の生年月日により経過的寡婦加算が支給されます。


もちろん65歳になれば基本的には自分の老齢年金をもらうことができます。
しかし中高齢寡婦加算の金額より自分の老齢年金のほうが少なくなることがあります。


この経過的寡婦加算は昭和31年4月1日以前生まれの妻が対象になっています。

今では国民年金の第3号被保険者の制度があり、妻は夫の扶養になっていれば保険料を払わなくてもよいのですが、この制度ができたのが昭和61年です。

という事は昭和31年4月1日以前生まれの妻はこの制度ができたときは30歳以上になります。
妻が20歳から30歳までの期間で空白が生まれます。

その期間を補うための経過的寡婦加算です。



逆にいうと昭和31年4月2日以降生まれの妻は、これまでもらっていた中高齢寡婦加算より自分の老齢年金が下回ることはないのです。
もちろん3号の手続きの漏れなどがないことが前提です。




遺族年金といってもいろいろあり複雑ですね。

そこでケース別にもらえる年金をまとめてみたので確認してみてください。

夫と死別し母子家庭になると遺族年金の金額はいくら?ケース別

亡くなった夫が国民年金1号被保険者(自営業者等)のケース

夫死亡時 35歳 国民年金1号被保険者(受給資格期間15年)

妻 35歳 国民年金1号被保険者

子 10歳

婚姻歴10年

この場合、子が18歳になるまで遺族基礎年金100,4400円が支給されます。

その後、妻は60歳から65歳まで約22,0000円の寡婦年金をもらうことができます。



夫死亡当時 45歳 国民年金1号被保険者(5年加入)
以前、会社員で国民年金2号被保険者の期間が20年ある
(受給資格期間25年)

妻 45歳 国民年金1号被保険者

子 15歳

子が18歳になるまで遺族基礎年金100,4400円が支給されます。

夫は過去に厚生年金に加入していて受給資格期間が25年ありますよね。

この場合、長期要件となり20年分の厚生年金部分の4分の3が妻に生涯支給されます。

さらに子が18歳になり遺族基礎年金が支給停止になると、妻のもらっている遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が上乗せされます。

亡くなった夫が国民年金2号被保険者(会社員)のケース

夫死亡時 35歳 国民年金2号被保険者(受給資格期間15年)

妻 35歳 国民年金3号被保険者

子 15歳

子が18歳になるまで遺族基礎年金100,4400円が支給されます。

さらに遺族厚生年金が支給されるわけですが、実際の加入期間は15年(180月)ですよね。

ですがこの場合、短期要件となり300月が最低保証されますので、300月分の遺族厚生年金額の4分の3が妻に生涯支給されます。



夫死亡時 45歳 国民年金2号被保険者(5年加入)
以前、自営業者で国民年金1号被保険者の期間が20年ある(受給資格期間25年)

妻 45歳 国民年金3号被保険者

子 15歳

子が18歳になるまで遺族基礎年金100,4400円が支給されます。

遺族厚生年金は受給資格期間25年以上あるので実加入月で計算されます。

つまり60月分(5年)の遺族厚生年金の4分の3が妻に生涯支給され、さらに遺族基礎年金の支給が終わった後から中高齢寡婦加算が上乗せされます。

まとめ

死別で母子家庭になった場合は

遺族基礎年金 780,100円+子の加算額
遺族厚生年金 夫のもらえるはずだった老齢厚生年金の4分の3

が支給されますが、子の人数、夫の働き方、収入などにより様々です。



すべてを覚えるのは大変だとは思いますが、
・現在支給されているのはどの部分の年金なのか?
・子や妻が何歳になったら支給額はどう変わるのか?
・もし今、自分が亡くなったらどの部分の年金が支給されていくらくらいなのか?
などを理解しておくことは大切です。


また、万が一の事があったとき公的年金等はどのくらい支給されるのかを把握しておけば、生命保険のかけ方や資産の運用も効率的にできると思います。


年金は自ら申請しないともらえないので漏れのないように受給していただければと思います。

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