今回は忘れやすいと言われている寡婦控除(かふこうじょ)について書いていこうと思います。
僕の知り合いにシングルマザーで寡婦控除を申請していなかった人がいたんです。
その人は子どもが小さいころに離婚しているんですが(再婚はしていません)、今は子供が成人していて子供も正社員として働いていました。
子どもが学生だった頃は会社が寡婦控除の申請をしてくれていてちゃんと控除になっていたらしいんです。
しかし今回、子供が仕事を辞めて専門学校へ通うことになったみたいなんです。
そこで、健康保険は自分の扶養にして、年末調整でも扶養控除は申請していました。
けど寡婦控除のことは頭になかったらしく、申請していなかったみたいなんです。
「そもそも寡婦って言葉はなかなか聞かないし、どういった人が対象なのかがわからない」とも言っていました。
会社側も今まで扶養控除の対象ではなかった人が対象になれば「あれ?」っとなりますが、従業員一人一人過去の状況まで把握するのは難しいのかもしれません。
もちろん、しっかりやってくれる会社もあると思います。
しかしその人の会社ではやっていなかったんです。
たまたまこんな話を僕は聞き「あとからでも申請できますよ」ってことで多く支払った税金が返ってきたわけですが、すべて会社任せではなく自分でも把握しておくことも大切です。
その人は初めは税務署に行くことに抵抗があり、面倒くさがってましたが、実際返ってきたときは「助かったよ」って言ってくれました。
そこで今回は寡婦控除の申請を忘れていたときの対処とどういった人が寡婦控除の対象になるのかをお伝えしたいと思います。
寡婦控除の申請を忘れてしまった場合は?
いままで寡婦控除の制度を知らなかったり年末調整で申請を忘れてしまったりしても大丈夫です。
過去5年分は後から申請することができます。
今、平成31年であれば平成26年~30年分は大丈夫ですね。
申請の方法は簡単で、
・申請していなかった年の源泉徴収票
・印鑑
・還付を受ける口座の通帳
・マイナンバー、身分証明書
これらを持って税務署へ行くだけです。
税務署に行くのはいつでも大丈夫です。
年末や確定申告時期だと混んでいる可能性もあるので、なるべく避けたほうが良いかもしれません。
子供や扶養親族に働いている人がいる場合には所得証明書が必要なケースもあります。
所得証明書は市町村役場などで発行できるので、何年度分の所得証明書が必要なのか確認の上取得してください。
寡婦控除の申請を忘れていた場合いくら返ってくる?
返ってくるのは所得税と住民税です。
なので、そもそも所得税や住民税を払っていなければ返ってくることはありませんし、払った税金以上に返ってくることはありません。
住民税はほぼ一律で10%ですが、所得税はあなたに所得により変わります。
もしあなたが特定の寡婦で、申請を忘れていた年が1年あって、所得税率が5%だったのであれば
住民税で30,000円、所得税で17,500円の合計47,500円返ってくることになります。
簡単な計算方法として
・あなたの該当する寡婦控除の金額に住民税の10%を掛けた金額
・あなたの該当する寡婦控除の金額にあなたの所得税率を掛けた金額
この2つを足した金額がおおよそ返ってくることになります。
寡婦控除にも種類があり、控除される金額も異なります。
あなたが適用できる寡婦控除の種類と控除される金額を確認してみてください。
寡婦控除とは?対象となる人の範囲
寡婦控除とは所得控除の中の一つで(配偶者控除とか扶養控除とかありますよね。その中の一つです。)離婚や死別(生死不明)してしまった人が適用となる控除です。
一般の寡婦
一般の寡婦とは、納税者本人が、原則としてその年の12月31日の現況で、次のいずれかに当てはまる人です。
(1)夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人です。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族となっていない人に限られます。
(2)夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は、扶養親族などの要件はありません。
(注)「夫」とは、民法上の婚姻関係にある者をいいます。
出典:国税庁HP
ポイントは
・死別なのか?離婚なのか?
・扶養している人又は子がいるのか?
・自分の合計所得金額はいくらなのか?
ですね。
(ここでの子は総所得金額が38万以下で他者の控除対象配偶者、控除対象扶養親族になっていないことが条件です。子の年齢制限はありません。)
特定(特別)の寡婦
一般の寡婦に該当する人が次の要件の全てを満たすときは、特別の寡婦に該当します。
(1)夫と死別し又は夫と離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
(2)扶養親族である子がいる人
(3)合計所得金額が500万円以下であること。
出典:国税庁HP
今回僕が話を聞いた人は特別の寡婦でした。
合計所得金額が500万円以下で扶養親族である子がいたからですね。
母子家庭の場合だと特別の寡婦になることが多いと思います。
母子家庭であればもちろんお子さんがいますよね?
そのお子さんが小学生や中学生ならもちろん要件は満たしますし、大学生でも成人していても、お子さんの所得が38万円以下であればお子さんの要件は満たします。
学生の子供でも、アルバイトなどをして総所得金額等が38万円(年収だと103万円)を超えてしまうと一般の寡婦の条件である「子」ではなくなるので注意です。
そして、あなたの合計所得金額が500万円以下であれば特別の寡婦です。
500万円以上であれば一般の寡婦になりますね。
お子さんがいるのであれば、死別なのか離婚なのかは気にしなくて大丈夫です。
男性の場合は寡夫控除
これまで対象者が女性について書いてきましたが男性にも寡夫控除(かふこうじょ)があります。
シングルファザーの方ですね。
寡夫とは、納税者本人が原則としてその年の12月31日の現況で、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。
(1)合計所得金額が500万円以下であること。
(2)妻と死別し、若しくは妻と離婚した後婚姻をしていないこと又は妻の生死が明らかでない一定の人であること。
(3)生計を一にする子がいること。
出典:国税庁HP
女性よりも条件が厳しくなっていますね。
もし女性で上の3つ全てに該当していると「特定の寡婦」になりますが、男性には「特定の寡夫」と言うのはありません。
寡婦控除額
寡婦・・・27万円
特定(特別)の寡婦・・・35万円
寡夫・・・27万円
この金額が自分の所得から引かれることになり、引かれた後の金額に税率をかけて支払う税金を計算します。
申請を忘れていた場合は逆の考え方ですね。27万円(35万円)が引かれていないので、自分の税率×27万円(35万円)が返ってくることになります。
住民税からも控除
上記では所得税の話でしたが住民税からも控除できます。
とは言っても特に自分で何かやる必要はありません。
所得税の申告をすれば住民税も申告したことになります。控除額は所得税よりも少なくなります。
寡婦・・・26万円
特定の寡婦・・・30万円
寡夫・・・26万円
申請方法
やはり申請を忘れてしまうと手間がかかってしまいます。
本来なら年末調整で出来る控除なのでぜひ覚えておいてください。
11月くらいになると会社から給与所得者の扶養控除等申告書が配られると思います。
申告書の真ん中あたりに「寡婦」「特別の寡婦」「寡夫」「勤労学生」とあるので該当する箇所にチェックします。
チェックを入れた右側に「左記の内容」とあるので内容を書きます。
離婚または死別、自分の所得見積額、子の名前と子の所得見積額を書けばOKです。
未婚のシングルマザーの場合は?
未婚の母や事実婚では寡婦になれません。
こうした問題を受けてみなし寡婦制度を導入する自治体が出てきました。
今のところ所得税や住民税は控除されませんが、保育料の軽減、児童扶養手当の支給基準緩和、などを拡大してきています。
すべての自治体で適用されているわけではありませんが拡大されてきていますのでお住いの自治体に一度確認されてみてください。
2019年度の税制改正で未婚のひとり親も住民税の負担軽減と臨時特別給付金の支給がされることになりました。
また、令和2年度分の年末調整から「単身児童扶養者」の項目が追加されました。
対象者や制度についてまとめたので良かったら確認してみてください。
まとめ
寡婦控除の申請を忘れていた年があっても過去5年分は遡って申請することができます。
いくら返ってくるのかはあなたの所得や環境で違いますが、毎月税金を払っているのであれば返ってくる可能性が高いです。
徴収するときは通知が届きますが還付の場合は通知は届きませんのであなたが該当するのであれば是非行動してみて下さい。
税務署とか足が重いですけどね。
けど行き慣れている人なんてそうそういませんよ。
今回僕が話を聞いた人は、「すごく親切に教えてくれて、手続きもあっという間に終わった」って言ってましたよ。
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