こんな疑問に答えていきます。
母子家庭で児童扶養手当を受給している場合、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用することで受給できる金額は増えます。
しかしイデコを始めれば誰でも増えるというわけではなく、手取りが増えるということでもありません。
イデコはお得な制度であることに変わりないですが、児童扶養手当が増えるからといって始めるのはまだ早いかもしれません。
スポンサーリンク
児童扶養手当の所得を減らすiDeCo(イデコ)の所得控除
児童扶養手当は前年の所得、または前々年の所得で受給できる金額が決まります。
基本的には所得が少なくて生活がきびしい。
といった人のための制度なので、当然所得の少ない人の方が受給額は多くなります。
その所得の計算方法がこちら。
児童扶養手当を多くもらうためには、ピンクラインを減らすかブルーラインを増やすかになるわけです。
でも、児童扶養手当を多くもらうために収入を減らす。
これでは本末転倒ですよね。
そこでイデコの登場です。
イデコで拠出した金額は「その他の控除」に全額加えることができます。
正確には「小規模企業共済等掛金控除」といった所得控除ですね。
これにより給料などの収入を減らさなくても所得が少なくなるので児童扶養手当を増やせるわけです。
iDeCo(イデコ)の利用で児童扶養手当が増える人と増えない人
では「イデコを始めれば誰でも児童扶養手当が増えるのか?」と言ったらそうとも限りません。
当たり前ですが、既に児童扶養手当が全部支給されている人は当然増えません。
全部支給となる所得(年収)はこちらを確認してみてください。
児童扶養手当を満額もらうには年収いくらまで?
対して、
現在一部支給の人。
もう少し所得が少なければ一部支給になる人。
こういった方はイデコを始めることで児童扶養手当は増えます。
で計算した所得が以下の金額未満であれば一部支給となります。
一部支給となる所得 | |
扶養人数0人 | 192万円未満 |
扶養人数1人 | 230万円未満 |
扶養人数2人 | 268万円未満 |
扶養人数が3人目以降は1人増えるごとに38万円が加算されます。
一部支給の金額は上記の所得内に収まっていれば〇〇円。というわけではなく、その所得をもとにさらに細かく計算されます。
なので仮に1万円でも「その他の控除」が増えれば一部支給の金額は増えることになります。
では、イデコを利用した場合児童扶養手当はどのくらい増えるのか?
比較してみたいと思います。
iDeCo(イデコ)を利用すると児童扶養手当はどのくらい増える?計算例
母子家庭の年収の中央値は170万円。
養育費などを含んだ場合の中央値は210万円。
と言われているのでこの年収を使って計算してみますね。
・年収170万円イデコ有り
・養育費込みの年収210万円イデコ無し
・養育費込みの年収210万円イデコ有り
イデコの拠出額は月5,000円(年6万円)
以上の4パターンで比較してみます。
児童扶養手当の金額や計算に使われる数字は毎年変わる可能性があります。
今回使った計算式は令和2年4月分~令和3年3月分までの計算式です。
年収170万円イデコ無しの場合の児童扶養手当
給与所得控除後の金額が105万円
一律の控除-8万円
105万円-8万円=97万円
所得が97万円だと子供が1人の場合、月額40,840円
子供が2人の場合、月額51,030となります。
年収170万円イデコ有りの場合の児童扶養手当
給与所得控除後の金額が105万円
一律の控除-8万円
イデコの拠出額-6万円
105万円-8万円-6万円=91万円
所得が91万円だと子供が1人の場合、月額42,230円
子供が2人の場合、月額52,420円となります。
このケースだとイデコを利用することにより月額1,390円児童扶養手当が増えることになります。
子供が2人の場合も月額1,390円増えます。
年収210万円イデコ無しの場合の児童扶養手当
年収が170万円で養育費が40万円とします。
給与所得控除後の金額が105万円
養育費の8割=32万円
一律の控除-8万円
105万円+32万円-8万円=129万円
所得が129万円だと子供1人の場合、月額33,470円
子供2人の場合、月額43,510円
年収210万円イデコ有りの場合の児童扶養手当
年収が170万円で養育費が40万円とします。
給与所得控除後の金額が105万円
養育費の8割=32万円
一律の控除-8万円
イデコの拠出額-6万円
105万円+32万円-8万円-6万円=123万円
所得が123万円だと子供1人の場合、月額34,850円
子供2人の場合、月額45,040円
このケースだとイデコを利用することにより、月額1,380円児童扶養手当が増えることになります。
子供2人の場合は月額1,530円増えることになります。
iDeCo(イデコ)を拠出限度額まで利用してみる
会社員の場合、イデコの拠出額は月額23,000円(年額276,000円)が最大となっています。
この金額を拠出した場合ではどうなるのか?先ほどの4パターンで比較してみます。
計算は省略して結果だけ紹介しますね。
子供が2人の場合、月額51,030円となります。
子供が2人の場合、月額53,350円となります。
年収170万円でイデコで月23,000円拠出した場合、児童扶養手当は月額2,320円増えることになります。
子供が2人の場合、月額43,510円となります。
子供が2人の場合、月額50,020円となります。
年収170万円でイデコで月23,000円拠出した場合、児童扶養手当は子供1人の場合は6,360円増えることになり、子供2人の場合は6,510円増えることになります。
iDeCo(イデコ)利用した際の児童扶養手当受給額の比較【まとめ】
母子家庭の方がイデコを利用した場合、
・拠出金額5,000円の場合、児童扶養手当は約1,500円増える
・拠出金額23,000円の場合、児童扶養手当は約6,500円増える
思っていたより増えないなぁと感じた方もいるかもしれませんね。
「全部支給」と「一部支給」を比べたときに、なんとなく「全部支給」じゃないと損だなぁと感じるかもしれませんが、別にそんなことはありません。
収入を減らして全部支給にしたとしても、イデコを使って全部支給にしたとしても「手取り」は少なくなります。
なので、今一部支給だからどうにかして全部支給にできないか?と考えるのは個人的にはナンセンスかなと思います。
児童扶養手当は働き損にならないような仕組みになっていますし、イデコに関しては老後の年金の補完といった位置付けです。
イデコの利用で児童扶養手当が増えるのはおまけ程度と思ってもらって良いのかなと思います。
iDeCo(イデコ)で児童扶養手当を増やす際の注意点
最後にイデコを始める際の注意点を3つお伝えしますね。
イデコは原則60歳まで払い戻しができない
拠出した金額はあくまでも自分の老後資金。
子供の大学進学などでまとまったお金が必要になったとしても拠出した金額を充てることはできません。
今の児童扶養手当の金額、所得控除の金額、だけではなく、これからどういったライフイベントがあるのかきちんと把握しておくことが大切ですね。
加入時と運用期間中に手数料がかかる
イデコの加入時に約3,000円。
運用期間中に年間約2,000円の手数料がかかります。
児童扶養手当が増額となれば賄える金額ではありますが、運用期間中の手数料は受け取りが終了するまでかかります。
子供の年齢
児童扶養手当は前年の所得をもとに計算されるので今イデコを始めたとしても児童扶養手当が増額するのは翌年です。
そして児童扶養手当が支給されるのは子供が18歳になった後の3月31日まで。
なので子供が小さい頃から始めれば恩恵を受けられる期間は長いかもしれませんが、子供が17歳のときにイデコを始めても恩恵は受けられなくなってしまいます。
母子家庭でiDeCo(イデコ)を始めると児童扶養手当はどのくらい増える?【まとめ】
母子家庭の方がイデコを利用することにより児童扶養手当の計算で使う所得が減り、受給額は増えます。
今回のケースですと、
拠出金額5,000円の場合、児童扶養手当は約1,500円の増額
拠出金額23,000円の場合、児童扶養手当は約6,500円の増額
となりました。
ただし、現在の手取りは少なくなります。
児童扶養手当が全部支給の人や低所得で支払う税金が少ない人、貯金があまりない人。
こういった方がイデコを始める際には一度立ち止まって考えてみた方が良いかもしれませんね。
対して母子家庭で子供がまだ小さく、児童扶養手当が一部支給で税金が課せられるくらいの所得がある人はイデコを始めることで得られるメリットは多くなります。
とはいっても、お得だからといって仕組みがよくわからない制度に安易に飛びつくのは個人的にはおすすめしません。
イデコについて簡単に解説した記事もあるので良かったら確認してみてください。
どのくらい増えるの?