昔は今に比べて年金の繰り上げをする人がそれなりにいました。
繰り上げの割合が高かったころの理由として「そんなに長生きはしないだろう」という意見が多かったみたいです。
しかし現在は平均寿命の伸びや「人生100年時代」という言葉も広まったせいか繰り上げて年金をもらう人の割合は年々減少傾向にあります。
というのは「年金を早くもらえば減額される」からですよね。
しかし減額以外にも様々なデメリットがあることはご存知でしょうか?
そんな事知らなかった。と、後悔しても遅いのが年金の繰り上げ繰り下げ制度です。
年金を早くもらうことを検討しているかたはここで紹介するデメリットを一度参考にしたうえで手続きしていただければと思います。
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年金を繰り上げるデメリットは?
今回は繰り上げのデメリットにフォーカスしてお伝えしますが、絶対に繰り上げがいけないわけではありません。
家庭環境、家族構成、過去の働き方、これからの生活。
年金では様々な要素を視野に入れ考えなくてはいけなく、十人十色です。
ただ、知らなかったことで後悔してもらいたくはないので、あえてデメリットにフォーカスして書いてます。
それでは、見ていきたいと思います。
老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げなければならない
年金制度はよく2階建ての構造になっているといわれています。
1階部分は基礎年金。2階部分は厚生年金。
年金を早くもらう手続きをする場合2つの年金を同時に繰り上げなければなりません。
基礎年金だけ60歳からもらって、厚生年金は65歳からもらう。みたいなことはできないわけですね。
老齢年金だけであればいいかもしれませんが、夫婦であったりまだ小さい子供がいたりする場合はそれに付随する年金が大幅に支給停止になってしまう可能性があります。
繰り上げた年金の減額は一生続く
一度繰り上げたら減額された金額が変わることはなく、変更や取り消しはできません。
年金を繰り上げると1ヶ月につき0.5%の減額になります。
・5年繰り上げると60ヶ月×0.5%=30%の減額
・2年繰り上げると24ヶ月×0.5%=12%の減額
ここで繰り上げた場合の分岐点を紹介しておこうと思います。
年金を目一杯繰り上げして60歳でもらいはじめると、65歳からもらう人に76歳8ヵ月で追い抜かされます。
その後は一生差が開いていき、長生きするほど年金の総額では損をしてしまうわけです。
大体の目安として
・61歳からもらい始めると77歳
・62歳からもらい始めると78歳
・63歳からもらい始めると79歳
・64歳からもらい始めると80歳
で65歳からもらった人に追い抜かされます。
60歳からもらった場合、76歳前に亡くなればお得。
76歳以上生きるのであれば65歳からもらったほうがお得。
ということになります。
あくまでも老齢年金の金額だけの単純な計算ですが、年金をもらい始めてから16年以上経過すると損をしてしまい、年金をもらい始めてから16年以内に亡くなると得になることがわかりますね。
遺族厚生年金を受け取る場合損をしてしまう可能性がある
こちらは妻に多いケースかもしれませんが、妻が自分の年金を繰り上げてもらっているときに夫が亡くなったとします。
その場合、妻は65歳前なので自分の老齢年金か遺族厚生年金を選ばなければなりません。
そのとき遺族厚生年金のほうが多い場合はこちらを選ぶと思います。
その後、妻が65歳になれば遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金を併給調整して受け取れます。
しかし、せっかく繰り上げをしたのに60代前半の厚生年金は受け取れず、なおかつ65歳以降は減額された厚生年金を受け取ることになってしまいます。
加給年金は早くもらうことはできない
この年金はいろいろと条件がありますが、
基本的には自分が65歳になり厚生年金をもらい始めたときに、年下の配偶者がいる場合に支給されます。
たとえば、繰り上げをして60歳から厚生年金を受け取る場合でも加給年金は65歳からの支給ということです。
これはデメリットとは言えないかもしれませんが、本来の年金を繰り上げて加給年金のもらえる期間を長くしようとしても出来ないわけですね。
加給年金について詳しく解説した記事もありますのでよかったらご確認ください。
寡婦年金がもらえない
寡婦年金とは、夫が死亡したときに60歳から65歳までの妻に支給される年金です。
妻が自分の年金を繰り上げてもらっている状態で夫が死亡した場合、妻は寡婦年金を請求できません。
妻は自分の年金をもらっているから65歳になったとみなされてしまうわけですね。
ちなみに既に寡婦年金をもらっている場合は繰り上げをすると寡婦年金は支給されなくなってしまいますので注意が必要です。
寡婦年金について詳しく解説した記事もありますのでよかったらご確認ください。
付加年金も同時に減額
付加年金とは保険料を老齢基礎年金に上乗せして払うことによって、将来の年金額を増やすことができる制度ですが、繰り上げをすると同時に付加年金部分の金額も減額されてしまいます。
付加年金について詳しく解説した記事もありますのでよかったらご確認ください。
60台前半に障害を負った場合、障害基礎年金が請求できなくなる
障害年金をもらう要件として国民年金の被保険者、または国民年金の被保険者であった人で60歳以上65歳未満であることが必要です。
繰り上げて年金をもらった時点で年金制度では65歳になったとみなされて障害基礎年金の請求はできなくなります。
国民年金に任意加入することができない
老齢基礎年金が満額に届かない場合60歳から65歳まで任意で国民年金に加入することができます。
しかし繰り上げて年金をもらっていると加入できませんし、保険料を追納することもできません。
既に支給されているので・・まぁ当たり前ですよね。
働きながら年金を貰う場合は「在職老齢年金」によって減額される
働きながら年金をもらっている場合、年金と収入の合計が一定額を超えると年金が支給停止になります。
この一定額は60歳未満と65歳以上で違いがあり、60歳未満の方が少なくなっています。
働きながら年金を繰り上げるケースは少ないと思いますが厚生年金の金額が大きい場合には繰り上げをしたことによって減額の対象になる可能性があります。
働きながらもらう年金について詳しく解説した記事もありますのでよかったらご確認ください。
公的年金等控除額の違いで課税
65歳未満で年金を受け取る場合は、65歳以上で受け取る場合よりも控除の金額が少なく、税金が高くなる可能性があります。
・65歳未満では130万円未満の年金収入は70万円控除できます。
・65歳以上では330万円未満の年金収入は120万円控除できます。
65歳からもらえば控除の金額が大きく税金がかからないが、60歳からもらい始めた場合控除の金額が少ないため税金を払う必要がでてくる可能性があります。
たとえば、
65歳からもらうと公的年金等控除120万円を引いて雑所得は0円になります。
繰り上げて60歳からもらうと120万円の30%減額=84万円
84万円-公的年金等控除70万円=14万円
14万円の雑所得が発生しますね。
適用できる所得控除などにより違いはありますが、公的年金等控除が少ないため支払う税金の金額が変わってくる可能性もあります。
まとめ
ここではデメリットについてお伝えしてきましたが、もちろん早くもらうことは悪ではないです。
早くもらうメリットもあるし、早くもらわなければならないケースもあるでしょう。
しかし個人的にはデメリットのほうが多いと思い、繰り上げ受給はおすすめしません。
繰り上げや繰り下げは一度してしまったら取り消しや変更はできないのでよく考えて請求していただければと思います。
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